書籍版も完結しました!
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以前にも多少触れたけれど、書籍版が完結したのでもう一度触れたいと思います。
まず私的なこと。
この小説は、私が「小説家になろう」にハマる切っ掛けとなった作品です。それ以前も読んではいたけど、この作品を読んでから本当に(!)たくさんの時間を費やすようになりました。この作品を連載途中から読み始め、完結まで追えたのは良い思い出です。
さて。
この作品は天然だけど破天荒で自分の幸せを追い求めることに熱心な主人公が、戦争に巻き込まれ活躍・出世していく話です。自分で望んだのではないが非常に強い力を持った(教育を受けた)主人公が、その力をどのように使っていくかが描かれます。「宿命」と呼んでもいいかもしれない。その辺りは七沢またりさんの作品の以前の作品(「
死神を食べた少女」「
勇者、或いは化物と呼ばれた少女」)と共通していると言っていいでしょう。ただ、以前の作品では天下り的に宿命が与えられていたけれど、この作品ではその理由もきちんと描かれます。その意味でも、一つの作品としての完成度はこの作品が一番かと。
この作品は異世界ファンタジーものだけど魔法などの要素はほぼ出てこない普通の戦争もので、「なろう」らしい作品ではなく翻訳ものに近い。以前、ミヒャエル・エンデみたいと書いたけど、翻訳児童書コーナーに置いてあるような良質な作品です。
書籍版でいう一巻・二巻で、戦争の切っ掛けと展開が描かれ、自分や仲間を守るために戦わざるをえなくなった主人公が花々しい活躍をする様が描かれる。その主人公に出世などの望みがなく、また逆に、関わりたくないというわけでもないというのは珍しいかと思う。「幸せになりたい」という抽象的な望みが糧になっており、具体的な野望・欲求などはないのだ。こういう、ある種、のほほんとした描き方は現代的とも思う。戦争ものの緊張感のある中、主人公のその雰囲気が良い緩衝材となり、読んでいてとても楽しい。
戦争自体も面白い。やや単純化してはいると思うが、ファンタジー作品の戦争としては十分な描き方だろう。そして、一巻・二巻までで華々しく描かれた物語が、三巻に入り収束していく様! そのときの寂しさといったらない。それだけでも良い物語を読んでいるという気持ちになれると思う。
なお、ネット版と書籍版で読み心地にはそれほど差を感じなかった。でも、書籍版の方が児童書っぽいし、子供には書籍版で読んで欲しいな、とは思います。多少残酷な描写はあるけれど、子供への贈りものには良さそう!
ところで、今回書籍版を読み直してみると、若干単純過ぎるかな、と思う部分もあった。意外性はないし、物語自体は慣れ親しんだ展開の連続といっても良いと思う。ある種、クラシカルな戦争もののファンタジーなので、完成度が高く面白ければそれで十分満足できるのだけど。今後の作者にも期待しているけど、こういう真っ直ぐな作品ではなくちょっと捻った作品を書こうと思ったときに上手くできるかは不安が残る。実際、最新作の「
極星から零れた少女」はスピード感に欠けていた気もする。
どちらにせよ、この前の連載から半年経ち、そろそろ次回作をと期待してしまいます。(追記)と思ったら
こんなのを完結させていたとは……! 東方は紅魔郷~永夜抄くらいしかやっていないので、読むか迷ってしまいます。