(~第三十二話)
そろそろ佳境に入りつつある七沢またりさんの最新作。
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多くの「なろう」読者が、七沢またりさんの作品を一度は目にしていると思う。前作、「火輪を抱いた少女 」も、それ以前の長編二作「死神を食べた少女」「勇者、或いは化物と呼ばれた少女」いずれも必読の傑作でした。
ただし、小説特有の心理描写であるとか、そういう技法が際立っていた……とは言い難いことには注意。個々人の心理などに深く立ち入っているというよりは、「戦記物」のように、一つ一つの戦いとその結果、そして政治を鮮やかに描いているのが素晴らしかった。その描き方と、作品のテーマとが上手く絡み合い、とても良質な物語に仕上がっていた。
さて。
今回の最新作では、今までと違い「日常物」に近い書き方をしている。そのため、今までのようなめくるめく戦争描写や政治的騙し合い(騙し合いは今作でもしているが、ややスケールが小さい)はない。今までの卓越した書き方を投げ捨て、新境地を目指した作品、といっていいと思う。
それが成功しているか? というと、失敗はしていない、というのが正直なところだ。文章はしっかりしているし、心理描写も下手ではないが、非常に上手いとはいえない。確かにこれでも面白いのだが、前作までの、スケールの大きい躍動感のある物語を知った身には物足りなさが残ってしまう。
そろそろフィナーレに向かいそうなので、最後だけでも派手な展開を期待したい。