(~87、最新話まで読了。今後も読む予定)
現在四半期ランキング一位。「
捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです」のカレヤタミエさんの新作。
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主人公は現代世界で生きた前世の記憶がある付与術師。両親が事故で亡くなり叔父夫婦に引き取られる。付与の術式が前世の漢字と同じだったため豊富な術式が使えたが、叔父夫婦が自分を金蔓のように思っていることに気付き、能力を隠して暮らしていた。十八のとき、付与術師としての能力を買われ王都の商会から縁談を受けたが、もっと良い付与術師が見つかったと言われて婚約破棄され、王都で一人、付与術師として暮らし始める。
転生ものではあるけれど、主に、今以上に女性に厳しい時代の、女性の仕事や生き方を描いている作品。
主人公は大人しい性格で、実家では付与術師としての実力を隠していたが、王都で人に求められると、人に知られる危険性も忘れてついついそれに応じてしまう。そのうちに貴族との繋がりも生まれ、貴族の友人と事業を始める。
そういった内容を丁寧に描いている。少し迂闊にも見える主人公の心情の移り変わりを見るのが楽しい。
また、知り合った男性と関係を深めていく様子も良い。相手の境遇や心情も丁寧に描いている。
雰囲気は、「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです」に比べるとややさっぱりしていると思う。
主人公が貴族だった「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです」と違い、こちらはお仕事小説としての色合いが大きいせいだろう。私は「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです」の、ちょっと不穏な雰囲気が延々と続くのが好きだったのでちょっと物足りなさを感じてしまったが、こちらの方が好きな人もいると思う。
さて、そんな主人公の事業内容がナプキン(生理用品)なのも、この作品が女性の生き方に向き合った作品だということを象徴している。生理が重い女性は活躍の場も制限される。主人公はそんな女性のための仕事をする。
ただ、主人公が作るナプキンは、確かに快適さをもたらし、貴族向けなら売れそうだが、冒険者にとって画期的という話には違和感を感じた。
作中の文明は現代と比べれば低いが、布などは量産できているようだ。それなら、工夫次第でナプキンに近いものを作ることは可能なように思えた。確かに付与術により快適にはなるだろうが、作中の描写ほどの差が生まれるのだろうか?
そういった、文明の進み具合と付与術の関係についてちょっと違和感を感じる部分はあった。それに、主人公は能力を限定的にしか使っていないが、本当は万能過ぎる気もする。
そのあたりの設定はちょっと問題がある気がしたが、物語の進め方や会話や心理描写の描き方は丁寧で、相変わらず上手い。
今のところ、私としては「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです」の方が好みだけど、この作品も楽しみに読みたいです。