「
魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」の第二章が完結しました。
このレビューにも書いたのですが、この作品は、「
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~」(や「
蘇りの魔王」)と設定がよく似ています。チートが二重なんですよね。元々最強だった者が転生している上、さらに、転生先の世界では元の技術が失われていた、と。
「蘇りの魔王」では、主人公が転生先の体に縛られるという制限が一応ありましたが、「魔王学院の不適合者」と「失格紋の最強賢者」ではそのような制限がほぼなく、本当に、二重の意味でチートな主人公になっています。
そのせいか、素直に主人公の活躍を見せるとギャグというかコメディっぽくなってしまうようで。「失格紋の最強賢者」は、序盤こそそこそこ真面目な雰囲気でしたが、第二章あたりからは意識してギャグを描いていると思います。各話に「勘違いもの」としての「落ち」を織り込んでいるんですよね。その試みは成功していると思いますが、ストーリーの深みとか緊迫感はない。とはいえ、繰り返しのギャグストーリーとして見ればこれはこれで上手くできているともいえるため、評価に迷うところではあるのですが。
「魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」の第一章は、ギャグになりそうなところを、シリアスなエピソードを絡めることでギリギリ耐えた感じだったと思います。
最初、主人公が成長するシーンからギャグっぽかったのに、後半のシリアスなエピソードがそれほど無理のない展開と感じさせたのは見事だと思いました。
が、第二章はちょっとギャグに寄り過ぎてしまったのでは? 途中で登場する応援歌はちょっとやり過ぎ感があった。
また、この章でも第一章と同じく、最後はシリアスなエピソードがあったのですが、その解決方法も無理矢理に過ぎたかと。特に、「魔王の真価」の戦闘シーン。これは、盛り上げようとしたのか笑わせようとしたのか分からない。ギャグとして読めばそこそこ笑えるシーンではあるのですが……。
というわけで。
こういう二重チートな作品は、ただのチート作品以上に主人公と回りの人物に差があるのだから、作者がシリアス路線に進めようとしてもどうしてもギャグになってしまうのだと思います。
いや、普通のチートものや「俺TUEEE」ものだってギャグの一種という見方もできると思いますが、「二重チート」はそれ以上にシリアスにはしがたいジャンルじゃないかと。良し悪しは別にして、ストーリーの展開を楽しむジャンルではないのかな、と改めて思いました。