(~271、最新話)
現在、「
望まぬ不死の冒険者」が人気の丘/丘野 優さんの作品。書籍化もしています。
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勇者に討たれた魔王が、数千年後に人間へと転生する。この主人公が、人間としては不自然な強大な魔力や、今では失われてしまった魔法の技術や魔導機械の知識を利用して(この設定はこの前レビューした「
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~」に似ていますね)、自分の村に訪れた危険を救う。その途中で、長い眠りについていた魔王時代の姪を救い、共に冒険者を目指す。
チート転生ものともいえるが、主人公が死んでから転生するまでの間に何が起きたのか? なぜ主人公は転生したのか? 主人公のかつての同族たちはどうなったのか? といった謎が主題として置かれているのが面白い。主人公はこの謎の解明に積極的に動くわけではないが、これらの謎に現在の不安定な情勢が絡んでいくという展開。
このストーリーは悪くないのだが、ちょっと寄り道をし過ぎた印象。第38話から始まる闘技大会は、基本的にはこのような主題とは関係がない長い寄り道だ。だが、大会途中に少しずつこの主題に絡まる事情が分かってくる……という展開にしようとしたのだろう。しかし、この大会に長くをかけ過ぎ、登場人物も出し過ぎたため主題がぼやけてしまった気がする。
それ以後も、主題に切り込んでいくというよりは、イベントをこなしながら少しずつ事情が分かっていくという展開でまどろっこしさは否めない。連載ペースが遅くなってしまったのもそのせいではないのかなぁ。一見関係なさそうなイベントが実は主題と影響してくるという展開は成功すれば面白いけど、細部まで決めてからではないと実際に書くのは難しいと思う。
作者は、上に挙げたような謎の解決方法は思い描いているのだろうと思うけど、そこに至る過程で書くのを難しくしてしまった印象です。個人的には、このまま書き切るのは難しいんじゃないかと思うので、「望まぬ不死の冒険者」の方を頑張って欲しい。こっちも、若干本筋から逸れつつあるのが不安ですが……。