公式WEB雑誌『N-Star』の五日間の連日更新期間が終了したので、ここまでの感想を気楽に書いてみます。
・アネコユサギ『
毒使いの逃亡者 ~瘴気の溢れた異世界で、何故か俺は回復している~』
異世界召喚もの。
召喚方法はちょっと変わっているが、短く言うと、ドラゴンのチート能力を得た主人公が、人間たちに追われるという設定。
最新話までほとんど設定の説明ししていない上、よくあるゲーム的世界の説明に文字数を費やされても面白いはずがない。まだほとんど物語が始まっていないので、追手から隠れて生きるのか、レベルを上げて復讐する方向に行くのかも分からない。なので、これから面白くなる可能性はあるが、テンプレ設定を見る限り期待薄。
・天那光汰『
最弱種族の俺が魔王ガチャで引かれる確率』
異世界召喚もの。
魔界の王女の夫になるために召喚された、何の能力もない主人公が偽装結婚する話。
主人公も相手の少女も大分幼い、という違いはあるが「
理想のヒモ生活」の魔界版のような設定。まだ本格的な政治方面の話は出てきていないが、今後その方向へ進むはず。面白くなるかは政治を上手く書けるかにかかっているが、今のところは悪くない。
・井の中の井守『
徳川料理人の事件簿』
江戸時代への転生もの。
料理人が医者の息子に転生、池でお姫様を救う。
まだほとんどプロローグだが、ここまでの部分は面白いし文章も良い。時代考証について語るほどの知識がないためはっきりしたことは言えないが、江戸時代っぽい雰囲気は出ている。
・ウメ種『
勇者を辞めた勇者の物語』
異世界召喚もの。(おっさんもの?)
勇者をやめて、喜怒哀楽のない女性(魔物?)と二人で何でも屋をしている主人公のところに少女からの依頼が来る
悪くはないけれど、序盤ならもう少し盛り上がって欲しい。しっかりした文章だが、洋服や容姿に関する描写が妙に詳しいのに対して、他の情景描写に特徴がなく、世界観が伝わってこなかった。
・くろかた『
天候魔法の正しい使い方 ~雨男は野菜を作りたい~』
異世界転移もの。
雨男だった主人公が、転移先で天候魔法を扱うようになる。これがチート能力になるのかな?
悪くはないが、あまりに淡々としている。これから魔法を使って野菜を育てていく話になるのだろう。この段階で評価するのは早すぎるけど、雑誌連載だと考えたなら、ここまでで全く盛り上がっていないのは問題では。
・新双ロリス『
堕落魔王の放浪生活 ~幸運を呼ぶ転生者~』
魔王への異世界転生もの。
魔王としてダンジョン作成していたが、仕事をしないため追放する話らしい。
「あらすじ」だと追放された後の話がメインのようだが、五話では、まだ追放する、と予告された段階で、追放された後がどうなるかが分からない。作成したダンジョンでエロいことをしているのみ。「ノクターン」でよくあるストーリーですね。
異世界転生ダンジョン生成→堕落→追放、と駆け足でストーリーが展開しているので、最新話で本題に入れていないのは仕方ないけれど、雑誌連載と考えたなら問題。
・埴輪星人『
ウィザードプリンセス ~落ちこぼれ少女を最強魔導士に~』
最強の騎士団に所属していたユウは、仕事への虚しさを感じて転職を決意。魔法学院の落ちこぼれ少女ティファは、冒険者と共に簡単な仕事をするよう指示される。この二人が冒険者の酒場で出会い、師弟となる話。五話ではちょうど二人が出会ったところまで描かれている。
「
フェアリーテイル・クロニクル 」もそうだったけど、この人の文体はちょっと癖がある印象。うまく言えないけど、説明の仕方がちょっとくどいというか……。個人的にはちょっと読みにくい。
ストーリーは二人の出会いまでがしっかり書かれており、悪くない。この文体と、主人公のちょっと鈍間そうな性格が気に入れば面白く読めそう。埴輪星人さんらしさは出ていると思う。
・壱弐参『
がけっぷち冒険者の魔王体験』
落ちこぼれ冒険者の主人公が、新しくできたダンジョンの奥でマントを拾うとマントから声が聞こえてきた。魔王を名乗るマントを身に着けることで、主人公は力を手に入れる。また、そのダンジョンに来ていた冒険者の少女に付きまとわれ、三人(二人とマント)で旅をすることになる。
転生/召喚要素がないファンタジーであることは評価できるものの、あらすじも文章も妙に古くさい印象。初期のライトノベルが好きな人向け?
・漂月『
異世界クイーンメーカー ~わがままプリンセスとの授業日誌~』
異世界転移もの。
元塾講師の主人公が、異世界のプリンセスを教育する話。まずは、戦闘の指揮を題材に算数を教えている。
とりあえず、テンプレ異世界転移描写を冒頭五行で済ませている点に非常に好感を持てる。その後は、地球の知識を異世界で教えるというよくあるパターンだが、淡々としつつ所々面白みがあり、漂月さんの味が出ている。
・広瀬煉『
平和的ダンジョン生活。』
異世界転生もの。
引きこもり女性主人公が、ダンジョンマスターに任命されるも、平和的なアトラクション経営を目指すという話。最新話ではまだ本格的な経営には入っておらず、主人公が猫型の魔物と戯れるところで終わっている。
ダンジョンマスターものは数あれど、アトラクション経営にしようという展開は珍しいのでは。ここまでなかなかスピーディな展開。怠惰な感じの女性主人公の造形も良い。これから経営シーンが面白く書けるかにかかっているが、今のところ楽しく読めた。
・深木『
はらぺこさんの異世界レシピ』
異世界転移もの。帰還するところに巻き込まれて転移という展開は珍しいか。
魔王討伐により、魔獣たちが元の姿に戻ったことに戸惑い、畜産を行うのに苦労していたところに仕事に行った主人公が、地球の知識で食材を見分けたり調理したりする話。
所謂料理ものだけれど、地球由来の美味しいレシピで異世界人の胃袋を掴む……という定型からは一捻りしている模様。料理ものというより食材ものになるのかな? しかし、この設定だと、読者が食べたくなるような美味しいものを描かなくても、異世界人達は満足できてしまいそう。料理ものとしてどうなんだろう……。
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というわけで、私はとりあえず、
・天那光汰『
最弱種族の俺が魔王ガチャで引かれる確率』
・井の中の井守『
徳川料理人の事件簿』
・漂月『
異世界クイーンメーカー ~わがままプリンセスとの授業日誌~』
・広瀬煉『
平和的ダンジョン生活。』
この四作を追ってみる予定。漂月さんの作品は多分読み続けると思うけど、他は面白くならなそうなら切ります。
なお、上の文章中、「雑誌連載としては……」と何度か書いたけれど、これ、作者本人が「なろう」に投稿していたとしたら、もっと連続で面白くなるところまで投稿しただろうから、ブックマーク数など評価は違っていただろうな、もったいないな、と思って書いています。
作者にどの程度連載に関する情報が伝わっていたか分からないけど、やっぱり一話の分量とかは作者に教えておかなきゃまずいと思う。
1. 無題
大よその作品がここまで本題に入れず盛り上がりに欠ける中、頭一つ以上抜きん出てるクィーンメイカーはすごいですね
がけっぷちは初期のライトノベルというより台詞の多さと地の分の少なさからSSのように感じました