(~29、最新話)
包囲殲滅陣で有名なゆゆぽさん、こと上谷圭さんの最新作。
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勇者パーティーから追い出された主人公が辺境で生活しようとするが、やはり勇者パーティーに必要だったと分かって再加入する話。
作者の前作を知っているせいか、意外と面白く感じられた。
一話はなかなか緊張感があるし、その後も、文章や表現に違和感を感じる部分はあるものの、辺境で地盤を固めていくあたりは自然な展開が続く。オリジナリティはないものの、展開が早いためさくさく読める。
ただ、そこに勇者がやってきてから話の流れが変わる。今までと質の異なる、凡人と天才の争いが話の中心になることに違和感。さらに、第15話で唐突に戦闘シーンが始まってからは、展開に無理がある上、戦闘シーンが上手くないため全く面白くなくなる。
ただし、最終話、この終わらせ方には驚いた。この展開を予想していた人は少ないだろう。いくら物語が上手く回らなくなったからといっても、今まで書いてきた内容をここまでばっさり切り捨てられる作者は少ないと思う。非凡なもの感じた。
さて、この作品は「
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」を盗作した疑惑でも有名になった。
どのあたりを指摘されているかを知った上で、今回初めて通して読んだのだが、意外と似ていない、という印象だった。参考にしているのは間違いないし、実際似ている点は多いのだが、結構読後感は異なる。
もっとも、勇者が追い出されたシーンや、勇者パーティが揉めるシーンのように、真似して書いたとしか見えない箇所もあるが。
読後感が異なるのは設定の違いが大きいだろう。「真の勇者」は色々な設定を組み合わせている上、加護の設定がかなり重い。「勇者パーティー」では、勇者パーティーから追い出された主人公が辺境で薬を作る……といったあたりは同じだが、重い設定は取り除き、シンプルで分かりやすい設定にしている。
だが、それらはテンプレの組み合わせなのだ。「真の勇者」の独自性は加護の設定や、それに関連した悪魔の加護の話にある。その辺りを真似していないため、意外と似ていないように感じられたのだと思う。
そして、「真の勇者」のやや重い設定をなくし、主人公のクラス(「真の勇者」で加護に対応するもの)の内容を変えたのは悪い方針ではないと感じた。「真の勇者」にあるやや複雑な設定とちょっと重い雰囲気は、魅力である反面、読みにくさもなくはない。もっと軽い話にした方が受けるという判断は正しかったんじゃないだろうか?
もっとも、作者にもっと技量があったなら、という条件が付いてしまうのだが。