(~109、最新話)
現在四半期ランキング二位の作品。著者の三上康明さんは「なろう」出身の作家ではなく、第5回スーパーダッシュ小説新人賞でデビューした方なんですね。
第二章が終わり、第三章の連載が始まったところです。
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天賦珠玉が発掘されるオーブ鉱山で、洗脳・奴隷状態で働かされていた主人公だったが、主が死んで奴隷の契約が切れたため脱走する。その途中で、普通の人間には使うことのできない規格外のオーブを使えたことで、自分が転生者だったことを思い出す。
絶望的な状況から逃げ出す途中でチート能力を手に入れる、というのは「
ありふれた職業で世界最強」なんかと似ていますね。序盤、絶望的な状況から逃げ出す感じは「
黒の魔王」とも近い。
なので、オーソドックス「なろう」小説と思って読んでいたので、作者が後書きで「全然今の「なろう」の流行とは違うけれど」(
第2章24話、69/109の後書き)と書いていることに驚きました。確かに、言われてみれば最近の「なろう」ではこういうタイプの筋書きは少ないですかね? 五年か、もう少し前にはたくさんあった気がしますが……。
ただ、上に挙げた「
ありふれた職業で世界最強」や「
黒の魔王」と比べると作者の技量の高さを感じました。特に、奴隷生活から逃げ出すプロローグ部分は読みごたえがあります。非常に緊張感があり面白い。
その後は、チート能力を得て冒険者になるというよくある展開。そうなると面白みは大分落ちる……というのはこのタイプの小説共通ですね。主人公がチートを持っている、ということ以外の設定(転生要素や、ちょっと凝ったスキルの仕組み)があまり生きなくなるというのも同じ。
とはいえ、この小説では色々と工夫はしてあります。「プロローグ」「第一章」「第二章」でかなり雰囲気を変え、飽きさせないようにしている。第二章の核となる部分をミステリー仕立てにしているのも面白い試みだと思います。
前の章の登場人物を良いところで再登場させ活躍させる、といったあたりも上手い。
というわけで、昔「なろう」で流行ったストーリーをプロの手で書いたような作品、という印象でした。ただ、小説としての出来は上がっていると思いますが、本当に面白くなっているのか? と言われると、どうなんだろう、と考えてしまします……。