(~378、本編終了まで)
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異世界召喚ものの王道的な作品。主人公にはチートな能力があるものの、召喚された世界で虐げられ、苦汁をなめる。その恨みを原動力に成り上がっていく。
このようにあらすじを書くと、例えば「
ありふれた職業で世界最強」や「
黒の魔王」と似た展開に思えるが、この作品は「成り上がり」部分をしっかり書いているのが良い。実力がついてきた後も思わぬ揉め事に巻き込まれたりし、安易に成り上がらないため飽きずに読めた。
……が、126話での霊亀(中ボス)戦が終わってしまうと成り上がり部分が終わり、生活も地位も安定してしまう。そこから仲間が増え、仲間たちが強くなっていく話が描かれるのだが、そうやって話が安定してしまってからはイマイチ。一応、それ以降も他のボスが出て戦闘シーンがあったり、盛り上げようという展開はあるのだが、残念ながら読者には緊張感が伝わらないと思う。終盤は派手な展開なのかもしれないが、正直なところよく分からなかった。風呂敷を広げ過ぎてしまった気がする。こういう系統の作品で、強くなってからの展開を描くのは難しいですね。
また、成り上がる途中では気にならなかったが、強くなってしまうと主人公の独善性が気になってくる。それほど性格が変わったとは思わないが、後半になるほど共感を呼ばなくなっているように思う。
この作品がそうかは分からないけれど、「成り上がり」をテーマにしてプロットを立てると、その成り上がるまでの部分はしっかり考えるけれど、それ以降は適当にしてしまいやすいのかもしれない。一旦強くなった後の展開は「仲間が増え、敵を倒しました」くらいしか考えずに書きだすことも多そうだ。そのせいで、成り上がり後の展開がおざなりになりやすいのではないだろうか。
というわけで、中盤126話あたりまではまあまあ面白く読めたけれど、それ以降はおすすめできませんでした。が、この作品の胆はそのあたりまでだと思うので、作品評価としては「まあまあ」にしています。
ところで、書籍版のamazonのレビューを見ると作者の文章力のなさを指摘するものが散見されるが(たとえば
これ)、Web版に関していえばそこまで酷いとは思わなかった。
「」付文で会話の主体が誰か分かりにくいことは、文章の勢いなどを重視すればよくあることだし、戦闘シーンが技名の羅列になり具体的にどういう描写が分からないのはファンタジー小説ではよくあることだと思う。特に後者、戦闘シーンをしっかりテンポよく描写できるような作家は一握りだろう。
私は後半の戦闘シーンが面白いとは思わなかったが、それは文章表現が主因ではないと思うし、戦闘シーンの少ない前半の文章表現が酷いとは感じなかった(少なくとも、「なろう」としては十分基準に達していると思う)ので付記しておきます。