(~69、最新話。第一部完結まで)
少し前まで四半期ランキングTOP5入りしていた作品。作者の昼熊さんは、「
いらないスキル買い取ります 【連載版】」や、「
自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」で有名な方ですね。
https://ncode.syosetu.com/n1119fh/
第一部完結したらレビューを書こうと思っていたのですが、完結して五日も経ってしまった……。ちょっと遅すぎますね、すみません。
引きこもりの主人公に体験版のゲームが送られてくる。村の運命を司る神となり、村民を導くという内容なのだが、その秀逸なリアリティ、特に、実際に生きているとしか思えない村人たちの動きに惹かれ、ゲームにハマっていく。また、その村からの贈り物が現実の主人公の家に届くようになると、その世界が現実に存在しているとしか思えなくなる。それがきっかけで、主人公もゲームの課金要素のために引きこもりを脱し、働きお金を稼ぐようになる。
ゲームと現実がクロスしていくという、古典的だがなかなか描きにくい内容がテーマになっている。「
アクセル・ワールド」なんかに近い印象。
ただ、そのテーマの描き方は「アクセル・ワールド」以上に上手いか。ゲームから贈り物が届くくだりはゲームと現実の境界が曖昧になったような感覚があり、わくわくして読んだ。
その後の展開もなかなか絶妙で、バランスの良い物語が続く。意外性のあるシーン、緊張感のあるシーンをバランス良くちりばめてあり、構成が良い。
と、構成や物語の展開は文句なしに面白く、評価も「おすすめ」にするか迷ったのだけど……問題はキャラクターだと思う。
まず、主人公の描き方が平板。「平均的な引きこもりってこんなんじゃないの?」 という感じで作っている感じがする上、その像が古くさい気がする。さらに、主人公と妹との関係とか、幼馴染の女の子が現れたりとか、安っぽいアニメのようで読んでいてちょっと辛い。アニメなら普通に見られる範囲なのかもしれないけど、小説で描くならもう少しきめ細かく設定すべきだと思う。
そのあたりの欠点も「アクセル・ワールド」と似ているのかなぁ……。でもこの作品では、引きこもり主人公が引きこもりをやめる、というのを一つの軸にしている分、主人公の生活環境に焦点が当たる機会が多いため、きつい箇所が多いと思う。
また、どこから送られてきたか分からない果物等を家族があまり疑いもせず食べたりするところとか、主人公の現実の家族や生活はどうなっているの? と疑問を抱かせる部分は多い。主人公が引きこもりを脱する理由がゲームの課金だというのも、なんか良い話風にしているけど、どうなの? という感じがするし。
「ゲームと現実がクロスする」という部分は非常に面白く描けているけど、「現実」部分に関しては粗が多いと思う。うーん、「なろう」で現実を描いている作品って、成功しているものがあまりない気がするし、難しいのかなぁ。
色々文句は書いたけど、面白いことは面白いし、
活動報告(ネタバレも含まれる)にある書きたかったコンセプトも理解できます(第三章後半はちょっと急ぎ過ぎの気もするけど)。全部が全部おすすめではないけれど、意欲的で良い小説だと思います。