(~39、完結済み)
「
無欲の聖女」「
シャバの「普通」は難しい」の中村颯希さんの新作。三日前に完結し、日間ランイングや週間ランキングTOP5にも上がっていました。
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いわゆる「腐女子」を題材にした勘違いもの。ファンタジーの世界で、所謂、腐った萌えを妄想するのが好きな伯爵令嬢が、自分の趣味を満たし、布教すべく、行動しているにもかかわらず、周囲からは聖女と勘違いされる話。
勘違いものの名手、中村颯希さんの新作。今回も安心して読めます。
主人公は最後まで自分が誤解されていることに気付かず、周囲の人間も主人公の本性に気付かない……というのは若干珍しいか。でもまあ、そういう、全てが分かっているような人間がいなくても、勘違いものの面白さにはあまり変わりありませんね。
また、主人公の妄想や行動が国家規模の事件と絡んでくるというあたりもさすがに上手い。一個の作品としてよくまとまっていました。
ただ、この「腐」という題材がどうだったのか。
まず、異世界転生ものでもないのに、主人公一人が男性同士の妄想をし、現代日本の腐関係の用語がたくさん出てくる(主人公が思いつく、という設定です)、というところにやや無理を感じてしまった。
また、主人公の「腐好き」にこだわりが少ない感じがしたのも気になったところ。
「なろう」向けにマイルドに書いているせいなのか、「攻め」や「受け」などについて標準的な内容に終始し、主人公が好きなのが何かが明確でない気がした。好きなものにはもっとこだわりがあるものじゃないのかなぁ。
後書きなどを見ると、作者は、主人公の性格を尖らせ過ぎたかと心配していたようだけど、むしろちょっとやり足りなかったんじゃないか、と思ってしまう。もっと主人公の嗜好をはっきりさせ、妄想描写の具体性を増した方が面白くなるんじゃないかと思うのだけど。
「腐」という題材自体が悪かったとは思わないけれど、ちょっと物足りなさも感じた作品でした。