(~18、「異世界の始まり」まで)
累計ランキング22位、以前にアニメ化もされた有名作品。作者の橙乃ままれは「まおゆう魔王勇者」でも有名。(私はアニメは見ていないです。「まおゆう」もアニメは少し見ましたが、小説は未読)
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ゲームへの転移もの。いわゆるチート要素などはなく、ゲームでの生活を主に描いた作品。
文章がしっかり、かっちりしており、スピード感はあまりないが読みやすい。が、それに比べるとストーリーや設定はやや難があると感じた。
ゲームへの転移ものにもかかわらず、戦闘シーンやレベルアップに関する題材は少なく、社会問題や経済問題を扱うというのは意欲的。「まおゆう」もそうだが、作者は経済方面に持っていくのが好きなのだろう。
だが、そういう問題を扱っている割には、設定はおざなりという印象。
このゲーム世界では、(少なくとも、私が読んだ序盤では)金銭の使用用途は少なく、蘇生能力があるため、転移者の命の価値も低い。それなのに、作中で描かれるような社会問題が起きるか、というのがまず大いに疑問。そのあたりの生活の問題がクリアされている状態なら、もっとゲームとして楽しむ人間も多いと思う。レベル上げなどを考えるプレイヤーも多いんじゃないだろうか?
社会問題の方向へ舵を取ろうとしたせいで、設定などに無理が出ているのだろう。プロットを最初にかっちり作ったせいで、それに合わせるために色々無理したのではないか、という印象。社会問題を中心に据えているため、キャラクターの魅力も若干乏しい気もした。
ゲームの世界における社会問題や経済問題を扱おうというのは良いし、それ自体は成功していると思う。だが、一つの小説として見ると色々とちぐはぐな部分も目立つ作品に思えた。ただ、語りも説明も上手いので、そのあたりに目をつぶれば面白く読める作品だと思う。