(~23、最新話)
現在月間ランキング一位、四半期ランキングも四位まで上がってきた作品。多数の同時連載を持ち、その多くが書籍化している月夜涙さんの新作。
活動報告を見ると、この作品も書籍化が決まっているようです。
https://ncode.syosetu.com/n2415eg/
ゲームへの異世界転生もの。
主人公は熟練の冒険者。ただ、レベルアップ時のステータス上昇の運が悪く、それ以上の高みは望めなかった。だが、諦めて田舎へ帰ろうとした頃、この世界がかつてやり込んだゲーム世界だと思い出す。ゲームの知識を使ってレベルリセットし、本来ランダムであるステータス上昇値を最大値に振り直し、もう一度冒険者を始める。
月夜涙さんは多数の連載をかかえ、そのどれもがランキング入りしているので、このブログで扱うのも四作品目です。「なろう」で人気の設定、序盤の勢いある展開、読みやすい文章……といったあたりが特徴ですが、その反面、序盤の勢いある部分を抜けると大分トーンダウンしてしまうことが多いのが欠点だと思っています。
この作品は、その美点の一つである序盤の勢いがちょっと不足しているかなぁ、という印象。主人公がこの世界はゲームだと思い出し、冒険者としての再起を決意するというあたり、上手くは書けているのですが、大きな感情の動きやピンチのシーンはなく、ちょっと淡々としている気もしました。
その序盤を抜けると、所謂レベル上げシーンに移るのですが、それも単調か。月夜涙さん得意の狐耳の女の子が出てくるのは良いのですが、ゲーム自体の目新しさはなく、主人公に面白い戦略があるわけでもないので、これ、という面白みは薄い印象。普通の異世界転生チートものという感じですね。
また、「おっさん」という設定が生きているのかは疑問。
主人公は36歳、おっさんと言えばおっさんですが、まだまだ若いともいえる微妙な年齢です。考え方もそういう感じで、「おっさん」らしい諦観のようなものは見られず、ギラギラした部分もかなり目につきます。一応、主人公に突っかかってくる若い冒険者を助けたりする描写があり、そこが「おっさん」なのでしょうけど……。確かに、月夜涙さんの他作品の頭に血が上りやすい登場人物に比べれば穏やかですが、他の「なろう」の「おっさん」と呼ばれる登場人物に比べると穏やかな印象はありません。
ちょっとこの作者さんに「おっさん」設定は合っていないかなぁ、と思ってしまいました。