(~14、最新話)
現在月間ランキング二位、四半期ランキング六位の作品。まだ十万字に達していないですが、切りが良いので。
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主人公は冒険者だったが、片足を失って田舎暮らし。そこで捨て子を拾って娘(義娘)として育てる。成長した娘は冒険者になるため都へ行き、そこでSランクへ出世。主人公に会いたいが、仕事が忙しくなかなか里帰りできない娘と、娘が来るのを待ち、時折知らされる娘の活躍や娘からの手紙に一喜一憂する主人公を描いている。
冒険者という仕事や、冒険者ギルドといった設定はテンプレなものの、話の筋は「なろう」ランキング上位では見たことのない作品。これといった見せ場はないものの、独特の面白さで引き込まれた。
娘は(実は主人公も)チートと言っていいくらい強い。戦闘シーンもあるが、一方的に魔獣たちを簡単に蹴散らしていくのでシーンが多く、そこに主眼はないだろう。主人公と娘の関係性と交流がメインだ。
娘は、冒険者としては非常に優秀だが主人公に対してはファザコンというギャップと、それ故の暴走が面白い。それに対して主人公は、自分の力が分かっておらずやや鈍感系。義理ではあるが父娘で恋愛感情はなさそうだが、ラブコメのようなやり取りが楽しい。
またその娘が、里帰りをしたいしたいと思いながら、仕事に振り回されて帰れないという展開が繰り返されるのも良かった。繰り返しのギャグのような面白さがある。
カズオイシグロの「
充たされざる者」を思い出した……が、これは自分だけか。重厚さはないし、文章も設定も「なろう」らしいものだが、ちょっと変わったことをし、今のところ一応成功しているという印象。
ただ、最新話で大望の里帰りが果たされてしまったので、この後どう話を展開させるのか不安は残る。作者にはこの後の展望があるのだろうか?
10/6追記)これを書いた翌日にカズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞してびっくり。「なろう」作品のレビューでノーベル文学賞作家の名前を出したりして良かったのだろうか。