(~31、第一章まで)
現在四半期ランキング五位の作品。
https://ncode.syosetu.com/n0031ei/
異世界転移もの王道系の作品。
主人公が、人間の王が魔物の国家を運営するというコンセプトのVRシミュレーションゲームをしていたら、首都ごと異世界へ転移させられ、部下の魔物たちに人格が宿ったという話。
VRの設定、ゲームの設定、異世界転移の経緯などにしっかり文字数を費やしているせいで、懐かしい印象がする作品。主人公がなかなか異世界転移に馴染めず、困惑したり恐怖したりするのも、ちょっと古くさくも懐かしい感じがする。
とはいえ、設定は一捻りしてある。
ゲームで育てた仲間と共に転移するという「
オーバーロード」系統の転移だが、元のゲームがシミュレーションで、主人公に特殊な能力がない(ただし、ステータス系統の力は使える)という点。また、経営していた国家の、首都のみが転移させられたという点。この二点が特徴。
元のゲームには反乱などの要素もあるため、主人公が安泰とはいえない。主人公はゲームをやり込んでいたが、国家の首都部分のみが転移したため、国民は不安を感じ、幸福度は下がっていく。それをどうにかしながら移転先の周囲の状況を調査し、今後の方針を定めていかなくてはならないため、主人公が不安を感じるのも無理がなく、緊張感を出すことに成功している。
ただ、第一章を読む限りでは、主人公の国民たちを万能にし過ぎている印象はある。第一章に登場する争いは基本的には一方的。他のプレイヤーが出てくれば変わるかもしれないが、現状ではそういう展開に向かわなそうか。
そんな戦闘シーンの代わりというわけでもないだろうが、ゲームでは気軽に行えた演説を、主人公が実際に行うというのが第一章の山場になっている。この、ちょっと恥ずかしく思える演説が好きな人なら、かなり楽めるんじゃないかと思う。
ただし、本来ならこうした演説(特に、メインの演説ではなく謁見での演説)はもう少しキャラクターを掘り下げてから行うべきで、この段階でやる内容ではなかったと思う。私は少し冷めてしまった。
文章や設定はしっかりしているので、さらにこの設定を生かした物語作りができれば盛り上がりそう。期待できる作品だと思います。
(追記:「エステルドバロニア」を下敷きにしたのではないか、というコメントをいただいたので、そちらも読んで
レビューしました)
1. 無題