(~54、本編最終話まで)
2015年連載の少女向け小説
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虐待されて育ち、世の中を信じられず自分を偽って演技することが習慣になってしまった少女が異世界転移し、そこで本当の愛を探す物語。
主人公の少女の心の痛みをずっと直接的に描いている作品。主人公は、お姫様と騎士が愛を育んでいる様子を傍観者として眺めようとするが、その心の中で二人を馬鹿にし、嫌悪し、だが二人に憧れもする。そんな主人公の声を直截に書いているため、読んでいて胸が痛くなる。
私はほとんど携帯小説を読んだことがないけれど、優れた携帯小説とはこういう感じだったのだろうか? 主人公の痛みを直接描いている分、共感を呼ぶし、泣ける箇所は多い。が、物語の肉付けが不十分と思えるところも多く、主人公に共感させるために他の登場人物を配置しているようにも思えてしまう。
小説としては、もう少し舞台背景とか、周囲の状況とかの説明をして欲しい……と私は思ってしまうのだが、泣ける装置としての物語として、必要なことはきちんと説明しているのだから、これはこれで十分という見方もできると思う。
確かに、主人公の感情を共有させたいのならば、周囲の説明はできるだけ省いた方が良い。逆にそれが行き過ぎて、現在がどういう状況か分からなくなるような愚も犯していない。この小説の狙いに合った、必要十分な説明をしているとも言える。
これが本当に良い物語なのか? と考えると首を傾げたくなる部分もあるのだけど、私も読んでいて、何ヶ所か涙が出てしまったし、作者の狙いは成功している作品だと思います。「泣ける作品を読みたい」という方は読んでみて下さい。