(~205、最新話。すぐやめるかもしれないけど、一応今後も読む予定)
現在四半期ランキング四位の作品。
https://ncode.syosetu.com/n0022gd/
異世界転生チートもの。
転生先の世界で水属性魔法の適正を得た主人公が、無人の地でサバイバル生活を送りながらその能力を開花させる。そこに流れ着いた剣士と共に人々が住む町へ行くと、チート能力を使い活躍を始める。
出来が良い部分と悪い部分があり、評価に迷う作品でした。
序盤について。
第一章の題名が「スローライフ」でスローライフっぽい描き方をしているが、基本的には戦闘がメイン。食事に関することなども書いてはいるがあまり深入りはしない。まあいわゆる、転生後の修行パートという意味合いが強い。
ただ、主人公が使う水属性の魔法について化学的(?)に説明している箇所が多いものの、結局魔法はイメージだという結論で終わるため、ご都合主義で主人公の魔法が進化しているように見え、修行シーンとしても物足りない。また、スローライフといいつつ、主人公に慎重さが足りず、強い魔物と戦闘して危く死にかけたりするのも気になった。
この第一章部分の出来は良くないと思う。
しかし意外にも、人が住む町へと辿り着き、冒険者ギルドに登録して……と、チート冒険者もの定番の展開になってからの方が面白い。
ダンジョンや魔王・魔物・悪魔の関係、ヴァンパイア、国内の政治的対立、国同士の対立や戦争などが多層的に描かれており興味深い。主人公はチート能力を持ってはいるが、同程度の能力を持つ人間もおり、さらに、別の種族ではもっと強いものもいる……といったあたり、バランスが良いと思う。
そして、主人公が色々な争いにそれほど積極的に関与しようとせず、単純にチート能力で解決、というような展開に持ってはいかないのが上手い。
印象としては、「
Knight's & Magic」なんかに近いかな。
「Knight's & Magic」の主人公はチートといっていい能力を持っているけど、その行動原理は、ロボットに作りたい・乗りたい、ということで一貫している。
この小説には「ロボット」みたいな分かりやすい目標はないけれど、主人公は自分の魔法や錬金術の研究に夢中で、戦争や紛争に積極的に介入したりはしない。また、最終的に主人公のおかげで揉め事が解決する場合でも、ただ力で解決するのではなく仲裁役になったりと、色々な役割を主人公に当てているのが良い。
(そのため、チート能力で敵を倒す爽快さなどを求めている人には期待外れかもしれない)
さて、そういう感じで、第二章以降はなかなかに面白く、特に、こういう冒険者ものとしては良い出来に感じたのだけど、気になる部分もあった。
異世界転生ものだから、ということなのかは分からないけれど、この小説では、元の世界(つまりこの地球や日本)との比較や、蘊蓄が結構出てくる。
前述の通り、魔法を化学的に描くという試みはあまり上手くいっていないと思う。化学的な説明自体は間違っていなくても、周囲の状況を考えれば不自然なところが多く、「そういう化学的なイメージで魔法を使った」で押し切るのは、矛盾しているとは言えなくても無理があると感じた。
化学以外でも、地球の歴史や経済に基づく説明が散見されるが、それらはどうなのだろう。
(地球の)世界史に関する内容を入れるのは、やり過ぎな気がする部分もあるが、物語の彩りとなっていると感じるところもあり、悪いとは思わない。
経済に関する説明も、「確かにそういう見方もあるな」と思えるような内容にはなっている。ただ、それが登場人物の一人の見方として描かれているなら良いのだが、それが当然の見方のように描かれている箇所があるのは気になった。
実際、「経済のお話……ではありません。ただの、国家運営の根幹のお話です。この辺りは、異世界だろうと地球だろうと何も変わりませんね。貨幣経済である以上は。」(0183の後書き)と作者も書いている。
間違いとはいえないが、ちょっと一方的な経済観を作者は持っているんだな……と私は感じた。物語にとってそれが一概に悪いとは言えない。ただ、そういう書き方で、現実の経済や経済政策を批判していると取れる箇所もあり、それにはちょっと引いてしまった。
評価に迷って長々と書いてしまった。
とはいえ、第一章を読んでいるときは全く面白さを感じられず、十万字程度読んだらすぐレビューを書くつもりだったのに、結局最新話まで読んだというのは、この作品に魅力があったからなのかなぁ、とは思う。
1. 無題