(~52最新話)
自称イケメンエリートがデブでブスだけどチートな女の子に転生する話
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魔法の存在するファンタジー世界への異世界転生ものなのだけど、よくある異世界転生ものとは一線を画している点がちらほら。
まず、主人公が非常にポジティブな点。異世界転生ものというと、「現世に未練がない主人公が、異世界でやり直しを図る」というような話が多いが、この主人公はむしろ逆なのが面白い。ただし本当は、”自称”イケメンエリートだったということが後で分かるが、彼が語り手な上、転生しているため、読者は、転生前イケメンエリートだということを疑う理由があまりない。
そしてもう一つは、転生後の体がブスでデブという点。転生後、(最初は)弱いという設定はよく見かけるが、この話のように外見的に劣っているという話は少ないと思う。ポジティブで積極的な主人公はこの点を改善しようと努力していく。ただし、転生後の体に全く取り柄がないというわけではなく、外見的な部分以外(家柄や魔法能力)はチート級である。
あと、あらすじの通り、男→女への転生ものなので、性転換(TS)ものになっている。が、作者がキーワードに設定しておらず、あまり意識して書いていない(もしくは、このキーワードをつけると色物に思われやすいので避けた?)のかもしれない。
今挙げたような初期設定の妙で面白くなっている作品。「イケメンエリート」などという、読者から敬遠されやすい人間を主人公に置いていながら良い作品に仕上がっているのは、主人公がとにかく明るく積極的だからだと思う。軽妙な語り口もなかなか読んでいて気持ちいい。少女漫画のパターンの一つである、「あまり可愛くない(と思っている)けど積極的な主人公が努力する」タイプと似た読後感がある。そういう意味で、あまり見ない設定ながら共感を産みやすい設定になっている。
さて、ここまで快調に話が進んできたが、ここに来て主人公の努力が実り、ただのチート転生ものになりつつあるのが若干不安。もうすぐ話が完結するのかな、とも思うが、そうじゃないのなら、ここからの舵取りは今までと同じようにはいかないと思う。これまでと違い、設定だけでは面白くできなくなった今、典型的なチート転生ものと一線を画す話作りができるのか、作者の技量が問われる。
それでも、今までと同程度の面白さを維持できるのか……期待と不安の入り混じった気持ちで、今後を楽しみにしています。