(~30、最新話)
現在月間ランキング五位の作品。書籍化も決定しているようです。
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「勇者パーティから追放」もの。「なろう」で人気のテンプレ(ジャンル?)の一つですね。
ただし、「勇者パーティから追放」ものの作品は、元々それなりに高い能力があったにも関わらず追放されてしまった主人公がその能力を生かして暮らしていく(あるいは復讐する)、という話が多い。それに対して、この作品の主人公(少女)は、追放された時点では無能だというのが大きく違うところ。
さらに、ストーリーも世界観もかなりハードでシビアなのが特徴か。
主人公は勇者パーティから追放されただけでなく、奴隷の焼印を押され、さらに奴隷としても売り物にならないと殺されそうになる。そこで主人公の覚醒が起こるのだが、得た能力も、優秀ではあるが使い勝手はあまり良くない。
そして、そもそも主人公が勇者パーティーに選ばれた時点から、陰謀に巻き込まれていた……という展開になっており、所謂「勇者パーティから追放」ものとして予想される内容とは一線を画す内容になっている。
主人公と仲間の女の子との関係や会話はほんわかな感じなのに、ストーリー展開はシビアというのは、たとえば「とある」シリーズなんかと近い印象。普通のラノベでは見かけるが、「なろう」ではちょっと珍しいタイプかもしれない。
序盤から最新話まで、かなり緊張感のある展開が続いているし、内容自体も良く、面白く読んだ。ただし、オリジナリティがあるか、というとその点では弱い気もした。かなり気味の悪い敵だの不気味な陰謀だのが登場しているが、どこかで見たようなものの組み合わせという印象は拭えない。
読書家の多い作者さんが好きなものを寄せ集めて書いているような印象を受けた。
また、そのホラー要素に関しては若干描写不足にも思えた。かなり気味の悪いシーンもあるのに、今一つ情景が伝わってこない。もうちょっと具体的に細かく描写して気持ち悪さを演出して欲しいところ。
ただ、やり過ぎると読者が離れる危険性もあるのかなぁ。戦闘シーンは結構しっかり書いていると思うのに、それに比べてホラーシーンは抑え気味で物足りなく感じたのだけど、「なろう」ならこれくらいの方がいいのだろうか?
少なくとも、「勇者パーティから追放」という導入を使って読者を集めた上で、作者好みのストーリーへ誘導していくという方法は成功していると思うし、非常に上手く纏まっていると思う。今後の展開が気になる作品なのは間違いないです。