ようやく読み終わりました!
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「なろう」一位にふさわしい、読みやすくかつ面白い作品だと思います。
まず、この作品で出色なのは、「異世界転生」を上手く使っているところだと思います。
「なろう」で流行りの「異世界転生」ものですが、このジャンルはその設定をいかしていない話の方が面白いものが多い……と思う。つまり、普通のファンタジーでも十分通りそうなところに、「異世界転生」を加えたような話。主観だが、そういう方が一つの物語として出来のいいものが多い。
逆にいえば、異世界転生というファクターは読者を作品世界へ誘うのには有効だけど、それ以降は足枷になりやすい。だってさ、「チート」とかってそれだけで興醒めじゃない? その世界の中で知恵を働かせて生き抜くのが面白いのに。(このあたり、異論はあると思うけども)
この作品は、まず、転生設定をほとんど使わないファンタジーものとしてかなり話を続けた後、第三章で昔の自分の姿でヒトガミなる者のところに呼ばれる。さらに、他の転生ならぬトリップ者が加わることで物語は大きく展開していく。
この「異世界転生」の使い方はかなり理想的だと思う。一旦転生先の世界について読者に周知させた後、元の世界との関わりを提示するという方法。扱いが難しい「異世界転生」を物語内容と深く関わらせ、かつ妥当なところに収めている。
だが、物語後半でループものっぽくしたのはその設定の延長とも言えるのだろうけど、やり過ぎた感が否めない。主人公の語りの楽しさ、しつこ過ぎずしかしハートフルな物語のリズムなどが失われていないから面白くは読めるものの、ちょっと失敗している感じがした。
第十六章以降一直線の物語になってからはちょっと単調だし……。物語の厚みがあるから読み進む上で苦労はないけど、ストーリーとしては失敗していると思う。具体的には分からないけど、違う展開にすればもっと面白くできたはず、という心証を持ってしまった。この展開にするとしても、さらなるどんでん返しがあるものと思っていたので、ちょっと残念。
……しかし、無職でやる気もなかった人が転生すればこんな風な充実した人生を送れるというのはやはりファンタジーという気もする。もしくは、体や顔が違えば、ということなのかなぁ。身もふたもないけど、隣の美人(ハンサム)を羨むというのは理に適ってるってこと?