(~25話)
爽快なホラー作品。
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ノクターンで既に評価の高いicecrepeさんのなろうでのデビュー作。ジャンルは「ホラー」となっているけれど、読んでいて怖いところはほぼなく、むしろテンポ良く爽快に読めます。『キリコ』と呼ばれる骸骨に襲われるところから始まり、程々に利己的な主人公が他人を利用しながら逃げていくというストーリー。
この作者の一番の特徴というか素晴らしい点は、その語り口だと思う。なんといってもテンポが良い! ネット小説やラノベにありがちな会話多用の作品ではなく、だけどそれ以上に読みやすくすらすら読める。読んでいるときの爽快感というか、楽しさでは図抜けていると思う。ただし、そのせいで若干描写が伝わりにくい部分がある。面白い、面白い、と思って読み飛ばしているといつのまにか場面がちょっと分からなくなっていたり。そのあたりのバランスは難しいですね。
今回の作品はただ単純に面白く読みやすく、その点では「非常におすすめ」です。ただ、ノクターンの「雨は地獄から」にかなり似てしまっているなぁ、とは思う。主人公の性格を変えるなど変化はつけているのだけど、ちょっと似過ぎてしまっている。突然発生した敵から逃げて……という基本が同じなだけでなく、登場人物でも似た性格の人がいる。「雨は地獄から」もこの作品も傑作だと思うし、それが悪いというわけじゃないのだけど。
あと、この作者はちょっと上手く纏めすぎる感がある。一応、一話一話意外な描写を出して、連載に飽きさせない工夫は盛り込んでいるのだけど、最終的な着地点はかなり妥当――というか、映画や小説で典型的な場所へ着地する気がする。それは悪くないし、もし映画にするのならそういう方が纏まっている感じがして良いのかもしれないけど、読んでいる最中の面白さに比べて読後感としてはやや物足りなくも感じてしまう。この作品が最終的にどうなるかは分からないけど、なんとなく小さく纏まってしまいそうな予感がある。
というわけで、むしろこれは映画化したら映える作品かもしれない……と書きながら思いました。映画にしたら十分怖いと思うし。
小説も面白いけど、是非映画で見てみたいね!