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大分時間が経ってしまいましたが、
こちらのコメントでリクエスト頂いた作品。書籍化・漫画化もされている作品です。
https://ncode.syosetu.com/n7787eq/
異世界転生・婚約破棄もの。
過労死した前世の記憶を持つ主人公(ダリヤ)は、幼い頃から父から魔導具師としての訓練を受けていた。そして、父の親友の息子であり、魔導具師として兄弟子でもあった人物と婚約していた。相次いで二人の父が亡くなり、明日には婚姻届けを出そうというところで、「婚約破棄させてほしい」「真実の愛をみつけた」と言われてしまう。
婚約者との関係を清算し、髪を切り、魔導具師として一人でやっていこうと森へ採取へ出かけたとき、騎士(ヴォルフ)を助ける。主人公とその騎士は非常に親しくなるが、恋愛にコンプレックスのある二人は、友人関係から先に進まない。
その間に、ダリヤは商会を立ち上げ、魔導具師として活躍していく。
導入として婚約破棄を使っていますが、基本は主人公のお仕事小説といっていいと思う。それに加えて、はたから見れば恋人同士なのに、友人と言い張る主人公と騎士の関係に(作中人物も読者も)やきもきする、という内容。
二人の関係を含め、人間や社会を非常に丁寧に描いている。
主人公の仕事を支援してくれる人たちをしっかり描き、主人公は彼ら彼女らからアドバイスを得て、女一人で仕事をするにはどうすれば良いか、貴族とどう関わっていけば良いか知っていく。その周囲の人物の考えにフォーカスした場面も多く、婚約破棄した元婚約者ですら、ただ悪し様に描くのではなく、フォローする描写を入れている。
そうやって色々と詳らかに描いているのは良いのだけど、そのせいもあってストーリー展開は遅め。それに、ちょっと地味だと思う。
そもそも、主人公が発明する魔導具が地味では?
主人公は、前世の記憶を利用し、生活感のあるちょっと役に立つ魔導具を発明していく。それらは確かに便利だろうけど、革命的に何かが変わるものではなく、物語を展開させる道具という意味では物足りない。
お仕事小説としてはその方がリアリティーがあるのかもしれないけれど、私はその辺りでもう少し派手な展開があった方が良い気がした。
あとは、食事とお酒のシーンですね。
主人公は、友人(?)の騎士とはもちろん、他の人たちとも度々会食し、お酒を飲んでいる。調理の様子も含め、そのシーンにかなりの頁を割いているのだけど、これはどうなんだろう。
正直なところ、私はあまり惹かれなかった。これは、描き方がどうこうというより、作中の主人公のように人と喋ってお酒を飲むのが好きかどうか、という問題な気もする。
この小説のファンの多くは、こういうシーンを楽しそう、美味しそうと思って読んでいるんじゃないかと思うんだけど……。
文章や描写は丁寧なので、その食事描写が楽しめれば面白く読めると思う。