(~132、最新話まで読了。今後も読みます)
今年の一月後半から最近まで四半期ランキングTOP5に入っていた作品。「
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)」などの黒留ハガネさんの新作です。
https://ncode.syosetu.com/n8281jr/
人間嫌いな主人公は、手先の器用さを生かして山奥でアニメの武器を作り、ネットオークションで販売して一人で暮らしていた。隕石によって電気が使えなくなり人類の文明が崩壊するが、その後も一人で隕石を加工して魔法杖を作ったりしてサバイバルしていた。そんな生活を一年続けたが、サバイバルがきつくなり山から降りる。そこで一人の魔女に会い、現在のこの世界がどうなっているかを知る。主人公の周囲には出ていなかったが、各地では魔物が跋扈し危険なため、特別な力に目覚めた魔女や魔法使いが各々のテリトリーを収めているらしい。そして、主人公の加工能力が特殊なものだと知り、魔法杖を作って売る職人として生き始める。
ポストアポカリプスものだが、独特の世界観が良い。
「終末トレインどこへいく?」とちょっと似た世界観かな? 電気がなくなるという部分はSF的な設定だが、魔法などファンタジー的な要素もあり、非常に魅力的。
また、主人公の造詣が素晴らしい。ちょっとコミュ障、みたいな登場人物は結構いるけど、ずっと人間嫌いを貫いているのは珍しい。そんな主人公が器用さを生かして職人をする、という設定もとても面白い。
この設定を生かしてテンポ良く物語は進む。
文明が崩壊した危険な世界に次々と事件が起き、それらを次々とこなしていく。
また、しばしば挟まれる他者視点も物語の重層性を増している。主人公はあくまで職人のため厳しい事件を直接目にすることは少ない。当事者の視点も入れ、物語に緊迫感を出している。
といった感じで、面白いし、先の展開がずっと気になる作品だった。ただ、勢い重視で書いているのかちょっと設定に無理があると感じるような箇所はあった。
特に気になったのは時間経過について。
この作品の前章と後章の間に結構長い時間しており、そこは重要な点だと思うのだが、その変化があまり書けてない気がした。
また、群像劇的に色々な人物の視点を入れているが、その後の展開に重要な場合とそうでない場合があり、その各話の重要性がどの程度なのか分かりにくい気がした。今読んでいる話の作中での位置づけがある程度分かった方が、読者としては読みやすいと思う。
やや気になる点はあるけれど、それを凌駕して面白い名作。