2020年にレビューした小説一覧は
こちら。
(毎年載せていた、四半期ランキングに入った作品一覧はやめます。読む人いなかったと思うので)
2020年に読んだ小説で面白かった(現在も読み続けている)のは、四半期ランキング内だと、
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アルマーク ~北の剣、南の杖~
純粋なファンタジー小説。児童小説のような内容・語り口でよくできている。
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黒鳶の聖者 〜追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める〜
追放テンプレだけど、キャラクターが立っている。
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ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁(人質)生活を満喫する
婚約破棄+ループもの。設定をきちんと生かしている。
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水属性の魔法使い
異世界転生チート物だけど、主人公があまりでしゃばらず抑制がきいている小説。ファンタジーの世界がきちんと描かれている。
の四作。
それに加えて、推薦をいただいて読んだ
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狂乱令嬢ニア・リストン
何が面白いのか説明しにくいけど、主人公が次何をするか、わくわくして読んでいる。
も、現在楽しみに連載を追っています。
他に、完結済みの
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ふつつかな悪女ではございますが
いつもの中村颯希さん。書籍化&コミカライズしたのかな。
も面白かった。
2020年は、ランキング上では追放テンプレが目立った年だったと思います。
パーティーで目立たないけど活躍していた主人公が、その能力を認めてもらえず追放され、新たな場所で活躍する……というのは、「
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」あたりからずっと、多少の流行り廃りはあれど投稿され続けていました。そこに、「今更遅い」というテンプレが加わり、新たに大きく流行しました。
元々、追放ものは「ざまぁ(ざまあみろ)」とセットで書かれることが多かった。
主人公が抜けたパーティーが上手くいかない様を描くことで溜飲が下がる、ということです。っそこに、ただ上手くいかなかっただけでなく、「追放した主人公を再び元のパーティーへ戻そうとするが、主人公は新天地で上手くやっているので今更遅い」という内容を描くことで、「ざまぁ」要素を強調することができるようになった、というわけです。
さらに、「追放」を「婚約破棄」に変えたりといった、バリエーションも生まれました。
これは、かなり出来の良いテンプレだったと思っています。
元々好まれていた追放→ざまぁ、がより内容が強調されている。主人公側、元いたパーティー側について書くべき内容が決まっており、書きやすい。起承転結がはっきりしている。
そのため、このテンプレに飽き、読みたくないと思っても、読んでみると意外と面白い……という小説が多かった。
逆に、そのテンプレ部分までは結構文章もキャラクターもよく書けていると思っても、それ以降になるとかなりレベルが落ちる作品もあり、最初は不思議だなぁ、と思っていました。
私には「テンプレでも上手く描けるなら、他の部分も上手く描く力があるはず」という気持ちがあったのですが、それが裏切られるような内容が結構あった。
でも、最近は、そういうものなのかな、と思えてきました。
このテンプレって、ちょうど小説一冊になるような内容なんですよね。繰り返しますが、起承転結がはっきりしていて、ざまぁ部分が終わると一旦物語が締まる。だから、その後に新しい展開を作ろうとすれば、別の登場人物を出したり新たな設定を出したりしなくてはいけない。
もちろん展開の描き方やキャラクターにもよるけれど、その後も(蛇足のようにならずに)盛り上げるのは、新しく別の小説を始めるより難しいかもしれない。
というわけで……色々語ってきましたが、このテンプレの良し悪しはよく分からないです。
私としては、もっと目新しい小説を読みたいと思っています。そういう小説はこのテンプレからは出てきにくいと思う。
しかし、このテンプレは起承転結がしっかりとしていて書きやすい、小説を書くのに慣れていない人が習作として書いてみるには非常に良い練習教材じゃないか、という気もします。
たとえば「異世界転生もの」とかだと、転生後主人公が何をするか? とか、チートにするにしても、どんなチート能力でどんな冒険をさせるか? など、決めることが多くて難しい。
それに比べると、このテンプレは考えなくても決まる部分が多いので、書きやすいと思う。
出来上がった作品の平均点も高いので、読者としても読みやすい。「異世界転生もの」だと、なんでこの作品がランキングに上がったんだろう……というような作品がたくさんありましたが、「追放~遅い」では全部そこそこの出来にはなっているように思います。
「つまらない小説は読みたくない」ということで言えば、このテンプレの流行は歓迎ですが、「本当に面白い小説を読みたい」ということでいうと、このテンプレは嬉しくない。
……難しいですね。
1. 無題