(~36、第一章完結済。活動報告によると、一旦ここまでで完結としていたが、書籍化の打診があったため、続編を書く気になったようです)
四月に四半期ランキング五位に入っていた作品。
正式な題名は「最高難度迷宮でパーティに置き去りにされたSランク剣士、本当に迷いまくって誰も知らない最深部へ……。~「戻ってこい」と言われてるかどうかもよくわからない。俺の勘だとたぶんこっちが出口だと思う~」です。
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主人公ジルは竜殺しの大英雄。だが、最高難度の迷宮で、戦闘中にパーティリーダーから必殺技を打たれ、床にできた穴へ転落。眼鏡が割れた上、方向音痴の主人公は地上へ戻ろうとして逆に迷宮の奥へと進んでいく。一方、地上ではジルを見捨てたことによりパーティ内の空気が悪化していく。
主人公最強・冒険者もの、というくくりには入るものの、テンプレ要素はほとんどない良作。
「パーティリーダーはなぜ主人公に必殺技を打ったのか?」という謎を、迷宮内と地上と、二方向から追っていく、ミステリー仕立ての作品。
迷宮内・主人公側と地上側で雰囲気が大分違うのも面白い。
主人公は、方向音痴で絶体絶命なはずなのだが、楽観的な性格と持ち前のサバイバル力でずんずんと前に進んでいく。そこに、方向音痴の仲間が加わると、さらにお道化た雰囲気になる。
それに対して、地上ではジルを見殺しにしたことへの後悔のため、陰鬱な雰囲気になっていく。その対比が良い。
主人公最強ものではあるが、戦闘シーンは少ないのも抑制がきいていると思う。迷宮内では主に会話で物語が進展し、考察が進んでいく。迷宮内の三人の性格・役割がはっきりしており、テンポの良い会話で読みやすい。
そして、意外性はないものの、なるほどと納得させる結末に向かう。
ただ、終盤~結末の方は、ちょっと説明が足りないかな、とか、もうちょっと伏線が欲しかったかな、と思う箇所もあり、「おすすめ」にするかはちょっと迷ったけど……。楽しんで読めたことは間違いないです。