(~52、最新話。今後も読む予定)
現在は落ちてしまいましたが、今月半ばに四半期ランキング四位まで行った作品。
https://ncode.syosetu.com/n4136hf/
突然、家の庭に穴が空いた。ゴミを捨ててみたところいくら捨てても埋まることがない。さらに、ゴミを捨てていると主人公の身体能力が上がっていく。主人公は、その穴を利用して廃棄物処理をはじめる。それがだんだんと世界を巻き込む一大企業となっていく。
題名には「ダンジョン」とあるものの、ダンジョン要素は基本的になし。主人公の身体能力がいつの間にか上がるという部分で、ゴミを捨てたおかげで主人公のレベルが上がったのかも、と想像させるのみ。
そういったいわゆる「なろう」っぽい小説ではなく、正統派のSFホラーといっていいと思う。そこに企業経営要素が入ってくる。まあ一応、現代にダンジョンが出現したという設定にも読め、そこから経営方面へ繋げたという意味では「
Dジェネシス」なんかが近いだろうけど、そういう文脈で読むものではないかな、という気がする。
SFと思えばそれほど奇抜な設定ではない。突然穴ができたのでそれをゴミ捨て場にするというのは、星新一「おーい でてこーい」の設定を下敷きにしているのだろう。その後、穴が主人公たちの精神を蝕んでいく、という展開も目新しいとはいえないと思う。
ただ、そこから経営やスパイなど、別の要素で肉付けしていったのは面白い。全体的にあっさりした描写なのだが、その淡々とした語り口のせいかリアリティが出ている。章ごとに主人公の企業が発展していくのだが、それと同時に主人公が、そして世界が穴に蝕まれていっていると分かる。
また、あっさりと語ることで怖さを演出することに成功している。おどろおどろしい描写はないが、こういう風に淡々と語られる方が怖く感じる人もいると思う。
SF・ホラーとして見たとき突出した出来とは言えないと思うし、一つ一つのシーンをもっとじっくり描いてくれた方が自分の好みには合う気がするため迷ったけれど、ちょっとずつ意外な展開が入っていることを評価して「おすすめ」にします。