(~19、完結済)
9月~10月に四半期ランキングTOP5に入っていた作品。八万字ほどの作品です。
https://ncode.syosetu.com/n3001ii/
主人公はピアノが好きな公爵令嬢。10歳のとき、同い年の従妹が公爵家に引き取られたが、彼女が亡き母に似ていたため、従妹ばかりが可愛がられるようになる。そんなときに、二人の魔力の相性が悪く反発したため、主人公は領地へ行くことになる。田舎で思う存分ピアノを弾き、また使用人と親しくなったことで、家族との不和から気を逸らせるようになる。
主人公が追放されるような作品ではあるが、いわゆる「追放もの」とは一線を画す作品。
心理描写が良い。序盤は主人公が追い詰められていく心理描写がきつく、読んでいて心が苦しくなったし、田舎へ行き、そこから少しずつ解き放たれていく様も良く描写されている。
また、従妹の性格・性質の描き方も上手い。主人公を追い詰めていく悪意の所在をしっかり描きだし、それも現実に存在してもおかしくないような怖い人間として描けている。
……と、中盤までの出来は良かったのだが、起承転結の転あたりで話が飛び、それ以後の重要な場面が一部省略され、説明的なセリフで話が展開してしまった。
どんな出来事が起こったかは書かれているので、それらのシーンを中盤までと同じように丁寧に描いたらもっと良い作品になったと思う。どうしてこんな風にしてしまったのだろう?
完全に私の推測なのだけれど、このまま書いていくと、学園ものの日常シーンなども描くことになり、作品の緊張感が失われることを作者は危惧したのかもしれない。今までの緊張感をもって描くのが難しい部分を説明だけで省略し、読み応えのあるシーンだけを残した……と、見ることもできる。
ただ、そう思っても違和感はあるし、上手く描ければ非常に盛り上がったはずの箇所も含んでいるので、もったいなく感じてしまう。
決して悪い内容ではないが、もっと良くなり得たと感じてしまう作品。